「ふたり 矢部太郎展」、2024年4月〜7月までPLAY! MUSEUMで開催!

矢部太郎とあなた「ふたり」の展覧会

「ありのまま生きる」。そう肯定してくれるのが矢部太郎の漫画です。優しいまなざしと穏やかな表現が、多くの読者を励ましてきました。展覧会は、代表作の漫画をじっくり読めるよう展示を工夫し、映像や立体物も加えた温かな世界が、来場者をじんわりと包み込みます。

漫画家・矢部太郎

お笑い芸人のカラテカ矢部太郎は漫画家でもあります。2017年に初めて取り組んだ『大家さんと僕』(新潮社)は、借家の1階に同居する大家さんとの日常をやわらかなユーモアで描いた創作作品です。初版は6000部でしたが、作品の評判がじわじわ広がると、若者から年配まで幅広い支持を集めシリーズ累計120万部を突破するベストセラーとなりました。2018年には同作で手塚治虫文化賞短編賞を受賞し、漫画家や評論家からも高い評価を得ました。矢部はその後もコンスタントに作家活動を続け、漫画を通じた表現は着実に根を張っています。

芸人の眼差し、力の抜けた絵と言葉。

絵本・紙芝居作家 やべみつのりを父にもち、子どもの頃から絵を書くことが好きだった矢部。芸人として磨いた観察眼と、力の抜けた絵と言葉で、大切なことをシンプルに伝えています。上品で聡明なかわいらしい大家さんを描いたフィクション『大家さんと僕』では、血縁や友情、愛情を超えた人と人のあり方、日常を通じて気づいた大切なことを描き、笑いと涙を誘いました。続く『ぼくのお父さん』(新潮社)では絵本作家の父と自身との日々を、現在も連載中の『楽屋のトナくん』(講談社)では動物園の楽屋で出番を待つ動物たちを描いています。認知症専門医・長谷川嘉哉の原案をマンガ化した『マンガ ぼけ日和』(かんき出版)やエッセイ漫画『プレゼントと僕』(『週刊新潮』で連載)でも、その温かなまなざしや絵、言葉にますます磨きがかかっています。

人々の心に届く、「ありのまま」を肯定する漫画

矢部の漫画の特徴は、優しいまなざしと、穏やかな表現にあります。個性的な登場人物たちの何気ない会話や行動の中に、見過ごされがちな気持ちの揺れをすくいあげ、温かなユーモアで表しています。現代社会は、価値観やコミュニケーションが複雑化し、生きづらさを感じる人が増えています。そんな中で、矢部は社会のあちこちで懸命に生きる人々をたたえ、「ありのままでいい」と静かに励まし、幅広い世代から支持を集めています。

矢部太郎とあなた、という「ふたり」

矢部は、人と人との間で起こる喜びやすれ違い、もどかしさなどの感情の機微を優しいタッチで描き、読者はその「ふたり」の間で起こる出来事に、クスっとしたり、驚いたり、穏やかな気持ちを抱きます。 矢部自身も、「漫画も、読者と僕の『ふたり』の物語かもしれないです」と言います。 展覧会は、読者はもちろんのこと、変化が激しい現代社会に疲れてしまった人、静かにひたむきに頑張る人、どんな人も優しく包み込みます。展覧会で読む物語を通して、心が少し軽くなったり、嬉しい気持ちになっ たり。日常の喧噪から離れ、来場されたひとりひとりが矢部と「ふたり」で対峙しながら、物語の作品世界を見て、感じられる展覧会です。

矢部太郎からのメッセージ

©️Taro Yabe

「ふたり 矢部太郎展」

2024年4月24日(水)ー7月7日(日)10:00-18:00(入場は17:30まで) PLAY! MUSEUM(東京・立川)


矢部太郎(やべ・たろう)

1977年東京都東村山市生まれ。芸人・漫画家。吉本興業所属。
1997年に「カラテカ」を結成。お笑い芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している。初めて描いた漫画作品『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞し、シリーズ累計では120万部を突破。その他の著作に、絵本作家である父との幼少期の思い出を綴る『ぼくのお父さん』、人気者になりたい動物たちの楽屋での姿を描いた『楽屋のトナくん』、認知症患者とその家族の日常を描いた『マンガ ぼけ日和』がある。2021年から手塚治虫文化賞の社外選考委員を務める。