2025年4月5日、待望の日本初の回顧展「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」が、東京ステーションギャラリーで開幕します。

フィンランドデザインの巨匠タピオ・ヴィルカラ
そのエッセンスがすべてこの一冊に
北欧デザインを愛する日本でも根強いファンが多いタピオ・ヴィルカラ。
建築家アルヴァ・アアルトの次世代として、フィンランドのデザイン界を牽引したデザイナーです。50年代ミラノ・トリエンナーレでの成功を機に、世界各地で数多くのデザインを手がけました。デザイナーであると同時に彫刻家でもあるヴィルカラは、機能主義やミニマルな表現からは距離を置き、自然からそのまま形を取り出したような、見る者の心を揺さぶる作品を生み出しました。
それから半世紀が経ち、ふたたび「自然から発想するクリエイション」「均一化されることのない、工芸的なアプローチ」「アートとデザインの融合」など、ヴィルカラを再評価する機運が高まっています。




本書は、フィンランドのデザイン界を牽引したデザイナーであるタピオ・ヴィルカラ(1915-1985)が自ら監修した図録『TAPIO WIRKKALA』を復刻したものです。この図録は、1981年にロシアで行われた自身の回顧展のためにフィンランド工芸デザイン協会から出版されました。
なぜ、40年前の図録を復刻するのか。それは、ヴィルカラ自身が監修に関わり、生前最期に出版を認めた本だからです。グラフィックデザインから、ガラス、あらゆる分野の工業デザイン、彫刻、ランドアートまで多彩な領域で膨大な仕事を残しながら、ヴィルカラはみずからの思考や手法についてほとんど語ることはありませんでした。この図録では、ヴィルカラによる創造の宇宙を28のテーマに分け、写真やスケッチなど400点以上ものビジュアルを通して、そのデザインの源流をたどり、精神性に触れることができます。





復刻にあたり、写真製版を得意とする藤原印刷の高精細スキャン技術により、原書『TAPIO WIRKKALA』を1ページずつ複写。40年前の手作業による本づくりの味わいそのままを残しています。

さらに、原書の編集とデザインを担当した建築家ユハニ・パッラスマー、写真を撮り下ろした映像作家・写真家のピルヨ・ホンカサロ、1950年代からヴィルカラの活躍を間近に見てきた島崎 信氏(武蔵野美術大学名誉教授)によるロングインタビューを収録。公私ともに生前のヴィルカラをよく知る人々が、原書が出版された背景や、人間ヴィルカラの知られざる一面までを存分に語ります。



「タピオはクラフツマン、工芸の巨匠であったということです。彼は卓越した描き手であると同時に、ガラスを吹くこともでき、木工、彫刻、金工や銀細工の名手でもありました。」
ー ユハニ・パッラスマー(建築家、ヴィルカラの親友)
「タピオは、寝るときも手だけはドローイングをし続けているような人です。彼の手は生命体のようです。その指先で、私たちに別の宇宙があることを示し、そこへ導いてくれる宇宙飛行士のような存在です。」
ー ピルヨ・ホンカサロ(映画監督、ヴィルカラの親友)
「今はものをデザインすることや、プロダクトがあたかも消耗品のようになってしまって、ものごとを深く耕すということから縁遠くなっている時代。そういうときに、ヴィルカラのものはとても新鮮で、心に響く内容をもっていると思う。」
ー 島崎 信(武蔵野美術大学 名誉教授)

2021年11月4日発売
定価:税込5,500円(本体5,000円+10%)
企画・構成:いまむられいこ
翻訳・編集:山口敦子(岐阜県現代陶芸美術館 学芸員)
デザイン:前田 景
スキャニング・印刷:藤原印刷株式会社
外国語訳協力:久慈正治、島塚絵里
仕様:A4変型、カバーつき、原書複製210ページ+日本語オリジナルページ
ISBN:978-4-908356-28-5
書籍『タピオ・ヴィルカラ』公式サイト
タピオ・ヴィルカラ(1915 – 1985)
1915年フィンランド南部の港町ハンコに生まれ、ヘルシンキで育つ。美術工芸中央学校で彫刻を学び、46年にイッタラ社のガラスデザインコンペで優勝、以後デザインを提供する。50年代はじめミラノ・トリエンナーレにおけるフィンランド会場の展示デザインを手がけ、自らの作品と共にグランプリを受賞。1950年代後半はレイモンド・ローウィ事務所、アールストローム社のデザインオフィスA-studioを経て、1966年にデザイン事務所を設立。フィンエアー社やローゼンタール社など多数の企業にデザインを提供し、世界各国から招かれて個展を開催。プロダクトだけではなく彫刻やグラフィック、建築デザインまで精力的に手がけた。ラップランドにサマーハウスを所有し、そこでのインスピレーションが作品に大きな影響を与えた。1985年没。妻は、セラミック・アーティストのルート・ブリュック(1916 – 1999)。
◎展覧会
「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」展
2025年4月5日(土)―6月15日(日) 東京ステーションギャラリー(東京)
2025年8月1日(金)―10月13日(月) 市立伊丹ミュージアム(兵庫)
2025年10月25日(土)―2026年1月12日(月)岐阜県現代陶芸美術館(岐阜)

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