文:『西の魔女が死んだ』の梨木香歩
絵:「リサとガスパール」シリーズのゲオルグ・ハレンスレーベン
「ひとが 絵と ふかく むすばれる ここには そういう ねがい が こめられている」
「人びとは 建築家の 結界のなかで 西洋のかけらたちと 出会う」
2025年8月20日(水)、国立西洋美術館を題材とした新しい絵本を出版します。文を紡いだのは小説『西の魔女が死んだ』などで知られる作家の梨木香歩、絵は絵本「リサとガスパール」シリーズでお馴染みの画家ゲオルグ・ハレンスレーベンが手掛けました。
国立西洋美術館は、東洋に現れた「西洋への窓」です。数奇な運命を辿ってやってきたコレクションは、森のはずれの美術館で「西洋のかけら」としてきらめき、そこでは“東”と“西”が静かに見つめ合っています。そんな特別な場所で、人が絵と結ばれることの喜び、そして大切なものを見出すことの幸せを、二人の名手が静かな力強さで描き出します。
内容紹介
絵本は2部構成。第1部は「電車に乗って美術館にきた ある母子の話」です。ある日、美術館にきた男の子がお母さんとはぐれてしまうところから物語ははじまります。男の子が出会ったあひると印象的な瞳の女の子、謎めいた紳士は誰でしょうか? 彼らに導かれ、やがて男の子は一枚の絵と出会い、不思議な交わりを体験することになります。
第2部「西洋美術館クロニクル」は、大人の読者に向けたエピローグとしてお楽しみいただける、数年後の未来を舞台にした物語です。遥か東の国に、西洋絵画を展示する美術館が生まれるまでの歴史を、ファンタジーと現実が交錯する詩的な語り口で描きます。その眼差しは、建築家の矜持、西洋の誇りと脅威を象徴する“竜”の存在、そして絵を見る人、絵を守る人々へと向けられていきます。
書誌情報『森のはずれの美術館の話』
価格:税込2,200円(本体2,000円+10%)
文:梨木香歩
絵:ゲオルグ・ハレンスレーベン
編集:永岡綾 装幀:名久井直子 写真:木村和平
協力:国立西洋美術館
印刷・製本:TOPPANクロレ株式会社
仕様:B5変型、上製、50ページ
ISBN:978-4-908356–70-4
販売スケジュール:
2025年8月5日(火)国立西洋美術館ミュージアムショップにて先行販売
2025年8月20日(水)全国の一般書店で発売開始
西洋美術館 限定特典:
表紙「夜」版に加え、特別仕様の「昼」版も販売します。
【取扱店】
全国の書店
国立西洋美術館ミュージアムショップ
【オンライン販売】
Blue Sheep Shop
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著者プロフィール
梨木香歩(なしき・かほ)
作家。小説に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』(新潮社)、『家守綺譚』(新潮文庫)、『海うそ』(岩波書店)、『椿宿の辺りに』(朝日新聞出版)など。エッセイに『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店)、『炉辺の風おと』(毎日新聞出版)など。児童文学作品に『岸辺のヤービ』(福音館書店)、絵本に『蛇の棲む水たまり』(ブルーシープ)などがある。
ゲオルグ・ハレンスレーベン
画家。1958年ドイツ生まれ。幼い頃から絵に親しみ、19歳で初個展を開催。大学卒業後はローマで画家として活躍し、現在はパリを拠点に活動している。妻のアン・グットマンとの合作絵本シリーズに「リサとガスパール」、「ペネロペ」、「こねこのプーフー」など。ほか、絵本の仕事に『森のかいぶつドギモヌキ』(ブロンズ新社)、『おつきさまはきっと』(講談社)、『イザベルと天使』(金の星社)などがある。
国立西洋美術館
東京・上野公園内に位置する、西洋美術専門の美術館。フランス政府より寄贈返還された「松方コレクション」を基礎に、主にルネサンスから20世紀半ばまでの西洋の絵画、彫刻、版画、素描などを所蔵。ルノワールやピカソなど一度は耳にしたことのある作家の作品が並び、西洋美術の流れを展望できる。
国立西洋美術館ウェブサイト
先行販売・出版記念展
「1冊の本を売る書店」として知られる銀座・森岡書店にて、本書の先行販売と出版記念展を開催します。会場では、ゲオルグ・ハレンスレーベンによる原画・スケッチを特別展示。サイン入り書籍や、ゲオルグさんの絵の販売も行います。静かに“絵を見ること”の豊かさに触れるひとときを、お楽しみください。
会期:2025年8月4日(月)~8日(金)
時間:8月4日(月)15:00~19:00、5日(火)~7日(木)13:00~19:00、8日(金)13:00~20:00
会場:森岡書店
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1階
著者からのメッセージ
梨木香歩
この物語創りに着手する前に考えていたことは、収蔵作品の最初のコレクターや戦時中それを守り通した人、さらに確固たる伝統芸術がすでに根付いているこの国に、西洋美術の殿堂となる建物を依頼された建築家の意気込みと自負……多くの人びとの思いが畳み込まれた美術館の物語であるとともに、絵を見るためにやってきた、たった一人の物語でもなくてはならない、ということでした。
ゲオルグ・ハレンスレーベン
最初にこの本のプロジェクトのことを聞き、梨木香歩さんの素晴らしい文章を送ってもらったとき、とてもわくわくしました。すぐに制作に取りかかると、国立西洋美術館の写真やビデオ、資料をもとに、たくさんのドローイングを描きました。見たものすべてがすばらしく、とりわけきらきら光る床とそこに映る深い反射に心を奪われました。まるでジヴェルニーのモネの池に映る風景のようで、その向こうに広がる魔法の世界へ誘われるようでした。子どもの頃、父と訪れて以来、美術館は私にとっていつも魔法のような場所でした。この本の絵で、そうした魔法の一端を表現することができていたら、とてもしあわせです。
私はもともと画家として出発したので、イラストレーションを本の中に再現された「絵画」だと考えています。使う油絵の具は、黄、赤、クリムゾンレッド、紫、青(実は2種類の青)、そして白の6色だけ。これらの色を音符のように捉えています。たとえば黄色と紫を単音のように使ったり、混ぜてうつくしい茶色にすることもできます。原画は、ポリエステル・ヴェラムという素材に描いています。昔ローマに住む建築家の友人に教えてもらった、とても安定した素材です。
いつか、この素晴らしい美術館を訪ねてみたいです。